岩澤有徑は、映像とペインティングによって、観る行為に独自の視点でアプローチを投げかける美術家で、岡山では初の展覧会になります。
岩澤は、90年代初頭から本格的な創作活動に入り、今日まで精力的な活躍をみせています。映像とペインティングという異なる素材でインスタレーションされた空間を、観客が上下左右動きながら観ることで、現実と非現実、日常と非日常とを思考し、自身の記憶や経験を呼び起こすある種の〈装置としての作品〉を制作しています。作品を見つめる現在の自分と、自身を取り巻く現実を実感しながら「視る」という行為を体感するのです。岩澤が「観る人にいつのまにか〈見ることを強制している物〉」と表現するように、前後に移動する視線と、その差し込む方向を思慮させながら、人々の眼差しに揺さぶりをかけます。何気ない「観る」という行為を考察する作品を、イメージの中で重ねることでさらに拡大し、深化させることで新しい視点を見出すきっかけになれば幸いです。