中国浙江省の西南部に位置する龍泉窯(りゅうせんよう)で焼かれた青磁は、鎌倉時代から室町時代にかけて莫大な量が日本に輸入されました。中でも上質な製品は「砧(きぬた)青磁」「天龍寺(てんりゅうじ)青磁」の名で愛され、今日でも数々の名品が伝世されて、国宝、重要文化財に指定されている作品も少なくありません。
また、日本だけでなく、高麗、琉球、東南アジア、南アジア、西アジア、東アフリカなど広い地域に運ばれ、当時の最も上質なやきものとして世界中の人々に受け入れられたのです。
2006年に、龍泉窯の中で最も品質の高い青磁を生産したことで知られる大窯村地区の楓洞岩(ふうどうがん)という地点で、明時代初期の14世紀末から15世紀初期にかけて、宮廷用の青磁を焼いた窯が発掘されました。これは、それまで謎とされてきた、明代皇帝の用いた龍泉窯青磁の生産の実像を明らかにするものとされ、世界の考古学者や陶磁研究者、愛好家の注目を集めました。
本展覧会では、日本伝世の名品の数々と、龍泉・楓洞岩窯址の最新の出土品を併せて展覧し、龍泉窯青磁の美の世界とその発展史、日本とのかかわりなどについて探ります。