武具とは、戦闘の道具である攻撃具と防御具の総称です。日本の武具は、海外で「SAMURAI ART(サムライ・アート)」と呼ばれ、金工のほかに漆工・染織・皮革などの様々な工芸技術からなる、総合美術工芸品としても高く評価されています。このように、精緻な技巧を施した武具は、儀礼や社寺への奉納品、あるいは贈答品や下賜品などに用いられました。
戦国時代の末期、豊臣秀吉の刀狩り令などによって、それまで未分化であった兵と農の身分が厳然と区別されるようになります。いわゆる、江戸時代の社会の特徴のひとつとなる「兵農分離」です。そのなかで武具は、身分や格式を示すステータスシンボルとしての性格を徐々に強めていったのです。
本展では、当館が所蔵する越中ゆかりの武具を通して、富山藩の武士社会を紹介するとともに、江戸時代における武具の役割をさぐりたいと思います。