工芸に表わされたイメージは、絵ではなく模様、文様などと呼ばれます。日本では古来、自然や生活のなかに見出した様々な対象を、模様として大胆に意匠化してきました。
模様の見どころの一つは、主題をいかに意匠化しているかにあります。ものの形を具象的に表したものもあれば,霞のように形のないものを形象化したものもあります。どのような模様も、簡潔な形の美しさを強調しているのが日本の模様の特徴といえるでしょう。 また模様においては配置の仕方にも工夫が凝らされています。対称的に配置したり、模様の単位を反復して器物の周囲にめぐらしたり、特に日本では「散らし」といって模様をランダムに配置したり、片方に寄せて余白を大きく取ったりして、非対称の美や破調の美を楽しんだりすることもあります。
さらに工芸の模様は筆で描かれるだけでなく、刻まれたり、埋め込まれたり、盛り上げられたり、織られたりと様々な方法によって表わされます。その技法と表現の多彩さにも着目いただきます。
近代以降、工芸では、器物の機能よりも、形状のユニークさに重きがおかれ、工芸に表されるイメージが模様よりも形において表されるようにもなります。「オブジェ」として結実するこの工芸の新様態においても、模様はその役割を失ったわけではなく、新たな解釈を施され、工芸の欠くべからざる要素として積極的に取り入れられているようです。
本展では、近現代の工芸における模様の成り立ちや展開を探りながら、絵とは異なる工芸のイメージ、「模様」の魅力に迫ります。