生誕100年を記念して、銅版画家・南桂子(1911-2004)の画業を多彩な視点からご紹介する展覧会、全国巡回の最終会場となります。現在の富山県高岡市に生まれた南桂子は女学校時代から詩作や絵画制作に親しみ、戦後まもなく上京、壺井栄から童話を学ぶ一方、洋画家・森芳雄に師事して油彩画を描きます。その森のアトリエで、後に夫となる銅版画家・浜口陽三と出会い、銅版画のおもしろさを知ります。
1954年に浜口と共にフランスに渡った南は本格的に銅版画の制作を始め、以後28年間をパリで過ごし、1982年から1996年に帰国するまでの14年をアメリカのサンフランシスコで過ごすなど、海外での制作活動は40年以上におよびました。作品は、少女、木、鳥をモチーフとした繊細で物語性に富んだ独特の世界観で貫かれ、誰からも親しまれるその作風は、かつてユニセフ(国際連合児童基金)のグリーティングカードに採用されたといった実績を誇るだけでなく、最近では国内の若い世代からも熱い支持を集めています。
本展では、銅版画の変遷を追いながら、原版や素描が語る制作の工夫やプロセスにも新たに焦点を当てながら、その画業の全貌を浮き彫りにします。