田川市美術館での新年最初の企画は、生命エネルギーの躍動感を「球体」「生物」「原石」シリーズで表現するシルクスクリーン版画家・小川幸一(1950-)と、屋内・屋外のさまざまな空間に「羽状」のオブジェを配置し、凝縮と拡散から新たな生命を与える現代美術家・村上勝(1947-)の2人にスポットを当てた展覧会を開催します。
シルクスクリーン版画とは、絹やフィルムなどの幕(スクリーン)を介して印刷する方法で、戦後、アメリカの現代アート作家を中心に急速に発達しました。芸術作品のほかに、Tシャツやポスターなどへの印刷などにもその技術が使われています。
一方、インスタレーションとは展示空間全体を使った表現方法で、作品を単体として完成させるのではなく、オブジェなどを屋外や展示室に配置し、展示する環境と関連付けて、全体を1つの作品として体感してもらうという現代アートの手法です。
1970年代の福岡で、ともに若手アーティストとして出会った小川と村上は、同世代の仲間とグループを結成して、福岡のアートシーンに新しい風を吹き込みました。その後2人は、シルクスクリーン版画とインスタレーションというそれぞれの分野で独自の世界を確立し、現在、国内外を問わず高い評価を受けています。30年という時を経た今、2人のアーティストが田川で再開するとき、そこにはどのような世界が生み出されるのでしょうか。
「生命」という共通のイメージを感じさせながら、シルクスクリーン独特の美しいグラデーションを生かして2次元で表現する小川と、空間全体を使い、見るものを作品の内部へと巻き込む3次元の村上。2人の作品からあふれ出る生命感と、両者が生み出すハーモニーをぜひお楽しみください。