素早いタッチと明るい色彩で絵画の世界に革命をもたらした印象派。また、今日もっとも人気のある西洋絵画といえば印象派かもしれません。しかし、その印象派の作家たちが油彩画を描くかたわら版画も制作していたことは日本ではあまりよく知られていません。彼らが活躍した19世紀後半の特にフランスでは作家の手による自由な線と創造的な表現を見せるエッチング(腐食銅版画)の復興や新たな隆盛を迎えていたリトグラフ(石版画)など、さまざまに版画の伝統が刷新されていました。印象派の作家たちも、例えばマネは自作の油彩にもとづいたエッチングを、ルノワールは友人である画商の求めに応じて制作するなど、その多くが版画制作に手を染めてゆき、版画を油彩画と同じように重要な表現手段の一つと考えました。そこでの彼らの革新的な創造性は、版画芸術をかつてない隆盛へと導くことになります。
本展ではそうした印象派の作家たちをはじめ、バルビゾン派やナビ派などその周辺の作家たちや、本の挿絵として制作された作品など約130点の版画作品で紹介します。19世紀後半から20世紀前半におけるフランスの美しい版画の数々をどうぞお楽しみ下さい。