木や土などの自然素材で道具を生み出すという知恵は、人の歴史とともにあり、その中で作られた「いれもの」は、実生活の必需品となっています。朝鮮の家屋には押し入れがないため、服飾類を保管する箱などの調度品が発達し、室内を整え、より快適に過ごすための工夫がなされました。また、朝鮮の寒冷な気候により発達した発酵食品を貯蔵するための甕、調味料や薬味を入れる壺は欠かせないものでした。用途に応じた様々な形や材質がみられ、機能的でありながら、部屋のしつらえにもあわせた装飾によって調和が保たれています。使い手の好みが反映され、大切に使い込まれたそれらには、ものだけでなく、人の想いまでそっとしまわれたかのようです。本展では、男性の文房具入れや女性が裁縫道具を入れた針箱、また野遊の際に使われた水筒や饌盒など朝鮮の人々が愛用した「いれもの」が一堂に会します。日々の暮らしに親しんだ、多彩でかわいい「いれもの」の魅力をお楽しみください。