博物館の収蔵品は、紙や木、布でできたものも多く、大変もろいものです。保存対策を講じなければいつしか色があせ、ほころび傷んで原型をとどめなくなってしまいます。多くの文化財を収集、保管する当館では、作品がなるべくいたまないように保存する一方、できるだけ多くの収蔵品を一般に公開する役割があります。そのため、普段から保存計画に基づいた積極的な対処を行っています。
昨年から、「東京国立博物館コレクションの保存と修理」と題した特集陳列を開催し、当館での文化財保存と修理の取り組みについてご紹介しています。今年度は平成12年度の修理作品の中から、木彫からは重要文化財「伝源頼朝坐像」(鎌倉時代)、油彩画から高橋由一作「大久保甲東像」(明治14年)など40点あまりを展示し、特に修理に関する活動の一端を紹介します。この頃は文化財の保存について、しばしば話題となりますが、作品を守るために、博物館が行っている活動を少しでもご理解いただく助けとなれば幸いです。
【主な展示作品】
釈迦六祖像 鎌倉時代・13世紀 絹本著色:解体・改装・旧補絹部分の合成
大久保甲東像 明治14年 カンバス・油彩:ルースランニング
伝源頼朝坐像(重要文化財) 鎌倉時代・13~14世紀 木造・彩色・玉眼:充填・接着
壷形土器 藤井寺市舟橋町出土 弥生時代・前1~後1世紀:解体・接合・復元