渡辺兼人は1947年東京に生まれ、東京綜合写真専門学校で学びます。独自の写真論を堅持しながら作品を撮り続け、1981年「既視の街」で第七回木村伊兵衛賞を受賞します。
渡辺の作品には一貫して人間不在の景色が写されています。しかしそれは、手付かずの大自然というのではなく、緩やかに人の手が加えられた風景です。決して劇的なものではなく、寡黙に写しだされた写真には、存在の息遣いが感じられます。
人間を透過し、その先にある抽出された時間の存在に気が付いた時、写真そのものが私達の意識の中に深く浸透してゆきます。
今回、「既視の街」から30年を経て撮られた「帰還 2009」川や湖などを切り取った「忍冬 2008」のシリーズ約50点を展示いたします。この機会に是非ご高覧下さい。