もみの木の頂点に星が輝くころ、食卓には暖かなごちそうが並び、深夜には子どもたちのところにサンタクロースがやってくる楽しいクリスマス。どうして星を飾るのか、サンタクロースとは誰のことなのか、いつから始まった行事なのか。一年で一番楽しい行事にはたくさんの物語が詰まっています。
クリスマスは古代の太陽信仰をもとにしており、人々は太陽を示す金を使ってアクセサリーや祭器などを生み出し、冬至の祭りを彩りました。祭器を制作する中、生み出されたのがエナメル金彩による装飾です。一度はローマ帝国滅亡によって技術を持つ職人たちが各地に散り制作されなくなりましたが、15世紀に肖像や植物、祝祭や神話の場面などを描いた作品が再び人気となり、ヴェネチアン・グラスが隆盛を誇る時代の先駆けとなりました。ガラス器形成の最古の技法であるモザイク・グラスもまた同様に15世紀後半に復活し、中でも花柄のミルフィオリ・グラスは今も人々を魅了し続け、ヴェネチアン・グラスの名を高めています。
クリスマスはキリスト教を信仰する国の人々が一年で最も重要視する祝祭です。その根源にあるものは「生きることの喜び」であり、「大切な存在への感謝」です。本展示ではエナメル金彩のコンポートやドルフィン脚ワイングラス、ミルフィオリ・グラスのプレセピオなどのヴェネチアン・グラス約60点を通し、クリスマスの物語を御紹介いたします。