神田日勝が初めて新聞をモチーフにした作品を描いたのは「画室E」(1968年)からです。その後、「壁と顔」や「室内風景」、翌年の「ヘイと人」など、新聞の見出しや広告などを細部まで描き、1970年の最後の完成作である「室内風景」(*複製を展示)では部屋一面の新聞紙が本物と見紛うほどです。神田日勝の新聞をモチーフにした作品を軸に、亀山良雄、岡部昌生、郭徳俊、木村光佑、島州一、森山誠、三島喜美代の新聞を作品に取り込んだもの、横尾忠則のポップ・アートの影響が感じられる作品も併せて展示します。
新聞は、グラフィックなデザインとして用いられたり、新聞そのものが印刷されたもので、版画もその概念の中に入ることからさまざまな技法が工夫されてきました。また、文字や記号のデザインとして作品の中に取り込まれたり、コラージュやフロッタージュの媒体としても用いられています。
神田日勝の作品では、新聞がアトリエの中のモチーフから、壁に貼られたもの、部屋一面の新聞紙とそのイメージが大きく展開してゆきます。
この展覧会では、新聞のさまざまなイメージ化とともに、神田日勝の1968年から1970年の晩年の作品の中心的なテーマとして捉えられた新聞のモチーフとしての過程も見ることができます。