次代の美術を担う岡山ゆかりの作家を紹介する企画展「共鳴する美術」、第4回目の今回は「物語」をテーマに、現在活躍中の4名の作家をご紹介します。
かつて語り手は、「昔々、ある所に…」ではじまる物語を語り、物語はそれを聞いた人々の心に生き続けました。本展は、いわば「今、この場所に…」ではじまる物語で、4人の個性豊かな語り手たちに市民が加わった、オムニバス形式となっています。
片山康之による静かな佇まいの人物の姿は、語らぬことで逆説的に物語の始まりを私たちに予感させます。下道基行の椅子の写真からは、不在の人物を見る者が想像することで物語が立ち現れるでしょう。鷹取雅一の妄想に満ちたドローイングは、優雅な悪意というべき意趣による猥雑さと美しさを備えています。龍門藍の描く色鮮やかな人形は、現代社会を生きる若い女性の寓意に満ちた姿と見ることもできます。市民による倉敷の過去・現在の写真と、未来の同じ場所について語る映像は、様々な物語を生むことでしょう。
私たちは日常において、他者とのコミュニケーションから生じる物語を生きているといえます。作品が語りはじめる時、見る人はどのような物語を自己の内部に紡ぐのでしょうか。本展が、多様な生の共鳴する場となれば幸いです。