パラミタミュージアムでは2009年度、昭和萬古の散逸を危惧し四日市萬古商業組合のご協力を得て、大規模な蒐集活動を行いました。それにより新収蔵された昭和萬古は約350点にのぼります。その中でも特に製作年代、作者等が明確に分かる昭和萬古は、次世代に伝えるべき大変価値のある歴史的資料といえます。
江戸時代中期に始まった萬古焼ですが、四日市では文政12年(1829)東阿倉川において、同所唯福寺の住職田端教正と信楽出身の陶工上島庄助が開窯し、茶器・食器、台所用品を中心に製作が始まりました。その後明治に入り、四日市萬古焼の父といわれる山中忠左衛門が萬古焼の大量生産に成功し、土瓶などが海外に輸出されるようにもなりました。海外への輸出は第二次世界大戦により一時途絶え、萬古業界も空襲による被害を受けましたが、戦後すぐに復興するとともに国内外問わず販路を広げ続け、四日市萬古は昭和54年(1979)、国の伝統的工芸品に指定されました。
本展では、新収蔵となった昭和萬古に代表される見事な花鳥の彫文が施された紫泥急須、色彩豊かな人物や花鳥画が描かれた壷や大皿などを中心に、以前から当館が所蔵する明治萬古等の逸品をそれらに加え、明治から昭和に至る四日市萬古の変遷をたどるとともに、各作者についての解説も添えて展示いたします。