ドイツ・デュッセルドルフを拠点に制作を続けてきた村瀬恭子(1963-)の作品は、少女像を中心にすえた具象絵画でありながらも、その筆致は、ときに滑らかに、ときにするどくカンヴァスの上をはしり、温度や湿度、さらには皮膚の上をすぎる風や体を包む水の感触などの、だれもが感じたことのある、それでいて不確かな、かすかな気配やおぼろげな感覚を伝えます。
本展では、少女が水の中にたゆたうペインティングから、その少女が森の中から洞窟まで、たどたどしく、あるいは力強く歩みだす近作で彼女の画業を振り返るとともに、この展覧会で初公開となる約10点の新作に加え、展示室を大胆に変容させるインスタレーションなど、近年ますます評価を高める画家の新たな展開を紹介します。