1860年に現在のチェコの南モラヴィア地方に生まれたアルフォンス・ミュシャは、アール・ヌーヴォーを代表する芸術家として知られています。
ウィーン、ミュンヘンでの修業時代を経て、パリに渡り、大女優サラ・ベルナールのポスターをはじめとする数々のポスターを手がけ、時代の寵児となりました。美しい花々に彩られ、優美な曲線を描く長い髪をした女性の作品は、「ミュシャ・スタイル」と呼ばれ、今も多くの人々を魅了しています。
1900年のパリ万国博覧会でボスニア=ヘルツェゴヴィナ館の装飾を担当したりする中で、ミュシャは画家としての使命を祖国チェコとスラヴ民族の連帯に見出します。アメリカ滞在を経て、1910年50歳の時に祖国チェコに戻り、後半生はプラハ市民会館の装飾や、《スラヴ叙事詩》など、祖国に捧げた作品を数多く残しています。
今回の展覧会では、日本で最も多くのミュシャ作品を所蔵する堺市のコレクションを中心に、初期から晩年にわたる作品からミュシャの全貌に迫ります。ポスターをはじめ、油彩、素描、書籍の挿絵と装丁、彫刻などの幅広い分野の作品群約180点から、ミュシャ芸術の多様性を感じるのはもちろん、後半生を祖国に捧げたミュシャの人生から、画家にとって、私たちにとって祖国とは何かということを考える機会にもなれば幸いです。