あべ弘士は、北海道旭川市在住の絵本作家です。1948年、旭川に生まれ、道立旭川西高校を卒業。1969年に旭川で鉄工所に勤め始めたころから、本格的に絵に取り組み始めます。1972年、旭川市旭山動物園の飼育係となり、1996年に退職するまでゾウ、アザラシ、ライオン、フクロウ、ゴリラ、ラクダ、ペンギンなどの飼育を担当しました。1975年、旭川のタウン誌に絵と文章による連載を始め、1981年、動物園の動物たちと飼育係たちとの日々を描いた『旭山動物園日誌』(出版工房ミル)を刊行。1989年に『かがくのとも-雪の上のどうぶつえん』(福音館書店)を出版してからは、絵本制作にいっそう力を入れるようになり、TV放映されて人気を博した『あらしのよるに』シリーズ(木村裕一・作、あべ弘士・絵、講談社 1994年。講談社出版文化賞絵本賞、産経児童出版文化賞JR賞)をはじめ、今日までに120冊を越える絵本やエッセイ等を出版してきました。
また、仲間とともに旭川市内に児童書専門店「こども冨貴堂」を興し(1987年)、旭川と隣接する鷹栖町とにまたがる自然ゆたかな嵐山を見守る「嵐山ビジターセンター」を設立する(1989年)など、地域の児童文化振興や自然保護活動にも重要な役割を果たしています。
本展では、絵本原画はもちろん、あべ弘士が絵を描いた「ねぶた」、そして展示空間そのものを絵本の世界にしてしまうような新作の立体作品などによって、あべ弘士の世界を総合的に紹介します。旭川の地で四半世紀にわたって飼育係として生きてきたなかで、動物たちや自然によせる独自のまなざしを培ってきたあべ弘士。地上に生きるものたちが種の違いを超えて出会い、いのちといのちを響かせ合うような、深くあたたかな生命観に貫かれたその表現世界を、ぜひお楽しみください。