2007 年に世界遺産に登録されたギリシャ・コルフ島にある国立コルフ・アジア美術館には、ウィーン駐在ギリシャ大使のグレゴリオス・マノス氏が、 19 世紀末から 20 世紀初頭にかけて、ジャポニズムに沸くパリとウィーンで購入した 1 万点以上におよぶ美術が所蔵されています。
そのコレクションは 1 世紀のあいだほとんど人の目に触れることがありませんでした。しかし、 2008 年 7 月に日本の研究者による大々的な学術調査が行われ、謎の浮世絵師、東洲斎写楽による肉筆扇面画が発見されたのです。これは写楽が版画での活動を終えた後の 1795 年(寛政7) 5 月に描かれたものとみられ、従来の写楽研究に大きな影響を与える大発見となりました。このほかにも、喜多川歌麿、北斎などの新出の浮世絵版画のほか、江戸城本丸にあったといわれる狩野探幽の屏風の摸本(原寸大)など絵画作品も次々と確認され、ギリシャに眠る秘宝の全貌が明らかになりました。
本展はこうした調査の成果を紹介するもので、膨大なコレクションから浮世絵、絵画など約 120 件が出品されます。真筆と確認されている写楽の肉筆画が一般に公開されるのは、世界で初めてのことです。