はたらきたくても、はたらけない。はたらいても、やっていけない。そんな経済不況にあえぐ今の日本には、経済成長をめざした時代のはたらき方とはことなるはたらき方が求められています。最近、日本では、再就職の道に漁業や農業を選ぶ人も増えています。本展では、魚を捕って食べ、土を耕して生きるこうした原初的な肉体労働などを描いたアジアの美術作品から、はたらくことをもう一度考えてみたいと思います。
アジアの美術では、近代以降、日常的な労働が絵画のテーマとして描かれるようになりました。社会主義の時代には、労働を賛美する表現がなされ、大量生産・大量消費の時代には、疲弊していく労働者を前に社会に警鐘をならす作品などが描かれました。漁業や農業、工業の現場で汗を流して身体をうごかす、アジアのさまざまな「はたらく姿」をとらえた27点の作品をとおして、今のわたしたちのはたらき方をふりかえることができればと思います。