伝統的な日本の美術品は、光などの影響を受けやすく、保存のことを考慮すると展示できる期間は限られてきます。遠方から来館された方が、希望の作品と出会えることができず、お叱りをうけることもしばしばです。
今年度、人気の「聖フランシスコ・ザヴィエル像」と狩野内膳(かのうないぜん)筆「南蛮屏風」(いずれも重要文化財)は、子供たちといっしょに楽しんでいただくために、「夏休み親子はくぶつかん」(7/18‐8/30)で公開することになりました。
そこで、春の企画展では、近世初期風俗画をテーマに作品を選んでみました。桃山時代には、移り変わる季節の風俗・行事を描いた月次絵(つきなみえ)や四季絵、名所絵など、中世以来好まれた主題を母胎として、刻々と変化する流行のすがたを描きこんだ新しいジャンルの絵画が生れました。洛中洛外図をはじめ、名所遊楽図、祭礼風俗画、南蛮人渡来図などに代表されるこれら近世初期風俗画は、当世の風俗を魅力的にとらえています。
「都の南蛮寺図」、「花下群舞図(かかぐんぶ)」、「観能図(かんのうず)」、「洛中洛外図」、「南蛮人交易図」などの出品作品には、当館のコレクションらしく、南蛮風俗が描き込まれています。「蒔絵(まきえ)南蛮人洋犬硯(すずり)箱」や「蒔南蛮人鞍(くら)」など、南蛮工芸の名品とともに、お楽しみください。