月岡芳年(つきおか・よしとし、大蘇芳年とも、1839~92)は、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師です。鎖国の世から突然の文明開化を求められた動乱の時代の中、激しい個性に満ち溢れた作品を次々と生み出し、しばしば「最後の浮世絵師」とも称されています。
武者絵や戯画で知られる歌川国芳の下で浮世絵を学んだ芳年は、武者絵や歴史画、美人画などさまざまなジャンルで活躍しました。当時の人気は随一で、名実ともに明治時代を代表する浮世絵師と言うことができます。迫力ある構図が特徴で、血みどろ絵と呼ばれる残酷な表現や女性の妖艶さを捉えた美人画などの魅力は、時代を越えて現代の私たちをも惹き付けて止みません。
本展覧会では、芳年の晩年の代表作であり、また今でも非常に人気の高い傑作、「風俗三十二相」と「月百姿」のシリーズを、前期後期に分けて全点紹介いたします。明治の巨星・芳年が最後に辿りついた境地は、浮世絵ファンならずとも十分にお楽しみいただけることでしょう。