第一次世界大戦後、圧倒的な経済力を誇ったアメリカでは、大衆消費社会が急速に進展します。特にそれまで高価だった自動車は、大量生産のテクノロジーと1920年代の好景気によって広まり、アメリカ経済を支えていくことになるのです。続く大恐慌と1930年代の不況の時期にも、都市では巨大な高層ビル「スカイスクレイパー (摩天楼)」が次々と建てられ、自動車から広がった新しいスタイル「ストリームライン(流線形)」のデザインが流行するなど、モダンな文化が展開します。しかし、貧富の差の拡大や深刻な不況の対策など、アメリカ社会は多くの問題を抱えていました。
また、19世紀の後半からアメリカに浸透していった「ジャポニスム(日本趣味)」の熱は、この時期、移民への人種的偏見による排日感情が高まる中、次第に冷めていきます。一方で、こうした厳しい状況でも、アメリカで活躍する日本人の美術家たちが現れます。そして、豊かなアメリカは、戦前から憧れの対象だったのと同時に、日本製品を輸出する市場として、最も重要視されていた国でした。
本展覧会では、この時期のアメリカを写しだした写真、一般的な家庭にも広がったモダンなデザインの自動車、家電、家具や食器などを紹介します。また、アメリカで活躍した日本人画家の絵画など、日米の交流を示す作品や資料によって、両国の美術・デザインのかかわりをさぐります。
本展で当時のアメリカの文化と日米交流をみることは、現在の私たちの生活を振り返るきっかけになるのではないでしょうか。