川村記念美術館では2008年3月のリニューアルオープンにともない、美術館を周囲の環境も含めたひとつの森に見立てて「絵画の森」と題し、夏季と冬季にそれぞれ焼く120点の所蔵作品を展示しています。冬季はコレクションのなかでも今までまとめて展示される機会の少なかった戦後日本美術の作品を中心にご紹介します。
戦後、日本で活躍した美術家たちは、海外の美術動向と並行しながら独自の表現を追及してきました。それは慣習化し精彩を失った従来の芸術館をくつがえし、そこからあらためて芸術とは何か、さらには人間とはなにかといった問題を考えていく行為でもありました。今回は、新たな表現を牽引した滝口修造(1903-1979)、斉藤義重(1904-200)らの作品に加え、ニューヨークを拠点に単色の平面を構成した作品の制作を続ける桑山忠明(1932-)、鉄を素材とした彫刻作品によって空間や時間についての思索を行った若林奮(1936-2003)、物を作り出すのではなく、ものと人と空間の関係自体に注目し、世界と直接に関わろうとした李禹煥(1936-)の作品などを展観いたします。
レンブラントや印象派からシュルレアリスムの作品、さらにはバーネット・ニューマンの《アンテナの光》など欧米の傑作とともに、日本で生まれた同時代の表現を鑑賞することで、異なる文化から派生した美術の多様な森を実感していただければ幸いです。