加古川流域に花開いた仏教文化をみわたしたとき、きわめて興味深い人物として法道仙人と行基菩薩の二人をあげることができるでしょう。この地域には、彼らが創建したと伝える寺院や、彼らが手ずから彫ったという仏像が多数残っています。とりわけ法道仙人は加古川流域を中心とした地域だけに残る伝承です。実際には、播磨における行基菩薩の足跡はよくわかっていませんし、法道仙人に至ってはインドからやってきて、空飛ぶ鉢を駆使したという伝説があり、実在すら疑わしい人物です。厳密な話をすれば、法道仙人や行基菩薩の活躍は、あくまでも伝承世界のなかの話ということではあるのですが、それでも彼らが寺院の営みのなかで顕彰され、人々の間に語り継がれてきたこと、そして同じ伝承をたくさんの寺院が共有してきたこともまた、無視できない事実なのです。この事実の向こう側には、いったい何があるのでしょうか。
今回の企画展では、「加古川流域における歴史文化遺産の総合的調査研究」事業の一環として行うものです。各市町教育委員会が共同で作成した法道仙人・行基菩薩ゆかりの寺院・伝承地地図を作成し、その足跡に触れるとともに、各寺院所蔵の仏像・縁起・出土遺物等を展示し、その時代の動きを紹介します。