今、最も人気の高い動物園として社会現象とまでなった旭山動物園。その人気を支えたのは動物の行動や生活を見せる「行動展示」を導入した動物園スタッフであり、その中心メンバーにあべ弘士はいました。創作活動に専念するために平成8年に同動物園を退職するまでの25年間、飼育係として勤務するかたわら絵本作家としても数多くの動物を描いていきました。
本展は、動物たちとの交流から生まれたナマの姿を、初期からの絵本原画約120点(予定)を中心に、書き下ろし作品「ホッキョクグマの親子、雪の振る夜に」を加え、旭山動物園の壁画パネルや映像などで展示、紹介するものです。
2005年に映画化され話題を呼んだ大ベストセラー『あらしのよるに』の挿絵原画も出展します。さらに原画作品だけではなく動物園時代の飼育手帳(公開予定)、動物園構想アイディアをまとめたスケッチなどの貴重な資料、キリンの立体物、ジオラマ作品そしてデザインを担当したJR北海道の車輌模型「旭山動物園号」なども展示します。
多彩な画材を使うことでそれぞれの動物の特性を表現しようとするあべ弘士。それは旭山動物園で25年間、飼育係として、実際に生の動物を間近で見続け、描き続けてきたからこそできる表現でしょう。「絵を通じて動物に恩返しができれば」というあべ弘士の作品から動物たちのメッセージを受け取っていただければと思います。