韓国の現代美術といえば、日本では、1970年代の「モノクローム絵画」や海外に拠点をおき国際展などで活躍する「海外派」の作品がよく知られています。しかし、民主化運動や高度経済成長でめまぐるしい変貌をとげた1980年代以降の韓国国内の美術は、これまで日本では体系的に紹介されることはありませんでした。
1980年代の民主化運動の影響を受けた「民衆美術」は、それまでの主流であったモダニズム絵画への反動という側面だけでなく、当時の激動する韓国社会そのものを映し出す美術運動として現れました。そして、この民衆美術運動によってつちかわれた社会の現実や歴史に向き合う姿勢は、今日の韓国現代美術の中にも息づいています。
本展覧会では、1980年代の「民衆美術」を中心に、韓国国立現代美術館などが所蔵する約100点の作品を展示することにより、1945年の開放以後、脈々と受けつがれてきた韓国のリアリズム美術の流れを紹介します。