30年前に世を去った洋画家・岡鹿之助(1898-1978)は、花瓶や籠にいけられたパンジー、森の中の古城、空を背景にくっきりと立つ燈台、雪景色にひっそりたたずむ発電所などで、多くの人々に愛されてきました。これらの題材は、岡が終生を通じてこだわり続けたものです。1920年代のパリやブルターニュで築かれた岡の技法と作風は、1939年に帰国した後も、生涯にわたって大きく変化することはありませんでした。しかし、制作上の果敢な冒険や、より高い完成へ向かおうとする情熱を私たちは見逃すことができません。この展覧会では、岡が大切にした題材ごとに9つの章をもうけ、初期から晩年までの作品を各章ごとにたどることで、この画家の魅力をもう一度考えてみたいと思います。