近年、液晶ディスププレイをはじめとする映像環境は飛躍的な技術的発展をとげており、以前では考えられなかったような高精細の画面を実現しています。本展はそうした状況を背景に、ビデオによる表現の新たな可能性を切り開きつつある、日本、中国、欧米の作家14名の作品を紹介するものです。
それらに共通する特色は映像表現の中に絵画的な世界の効果を生かしているというところにあります。動くイメージに、これまでは静止した動画に固有のものと思われていた表現の豊かさを取り込んで見せているといってもよいでしょう。屏風風に配した液晶ディスプレイの中で山水が微かな動きを宿す作品(千住博)、フェルメールをテーマとした展示空間によって、タブローの世界と映像の世界とを往来する試み(森村泰昌)、スローモーションで動く絵画的な美しい画面と音楽とを精妙にシンクロさせた作品(ブライアン・イーノ)、水墨的技法によるアニメーション作品(チウ・アンション)などのユニークな試みは、私たちに液晶絵画と呼ぶべき今日的な映像表現の一局面を堪能させてくれるに違いありません。