1911(明治44)年、山口県大津郡三隅町に生まれた香月泰男は川端画学校洋画部で学んだ後、東京美術学校で藤島武二に師事。美術学校の同期に高山辰雄がいます。梅原龍三郎に影響を受け、国画会に参加します。1943(昭和18)年に応召、満州へ赴きますが、敗戦、1947(昭和22)年までシベリアに抑留されます。この時の過酷な体験は、帰国翌年描き始めた「シベリア・シリーズ」で知られています。
1970年代には精神的にギリシャ、スペインなどヨーロッパ、タヒチ、モロッコなどに取材旅行をし、それをもとに、木版画集「ギリシャ」、石版画集「モロッコ」などを制作しています。「シベリア・シリーズ」は、静かな中にも強固な意志を感じさせるような力強さを秘めていますが、この「シベリア・シリーズ」とは対照的に、版画では、それぞれの土地の特色を捉えながら、明るくユーモアを感じさせるのが特徴的です。
昨年は、石版画集「モロッコ」、木版画集「グランカナリア」をご紹介しました。今回の展覧会では、石版画集「北の旅から」、木版画集「ニース」、「タヒチ」から約20点を展示します。