浮世絵を見ると、江戸の庶民の楽しみが見えてきます。江戸の庶民は、春夏秋冬、いろんな行事にかこつけて1日がかりで行楽に出かけました。新年は凧揚げで始まり、梅は亀戸、桜は「花の雲、鐘は上野か浅草か」と芭蕉の句にあるように、上野の山、不忍池は今も同じく桜の第一の名所、他に吉原、隅田堤などにも出かけました。続いて、藤見物は亀戸天神、やがて海遊びは潮干狩、芝浦や洲崎で貝を拾う行楽。5月28日は川開きで江戸名物の花火が上がり、橋の上は見物人でいっぱいとなり、隅田川に屋形船を浮かべて三味線、小唄で見物しました。そして七夕すぎると旧7月26日の夜の二十六夜。これが江戸の月見で愛宕山、高輪などの高台に夕方から人が集まり、月の出を待つ。屋台や茶店が立ち並び、賑やかな月見であったようでした。そして、秋祭りが過ぎれば師走は年の市でしめくくります。
今回の展覧会では、四季を通じ、自然の恩恵を受けて活き活きと過ごす江戸庶民の様子を表現した浮世絵版画を20点展示します。