岩城直美は1969年京都市生まれ。2003年のVOCA奨励賞を受賞している。精華大学に在学中からモノクロームに近いダークな色調で矩形を好んで用いた構成的で半抽象的な風景を描いていた。その後はテレビのフレームや列車の車窓によって区切られた画面上にスピード感のある風景が出現する。近作ではノスタルジックな田園風景の趣に違いないのだが、作中の多くに窓のない単に矩形の家が立ち現れる。微妙に混色された灰色をベースにした未明か薄暮の世界。伸びやかともあるいはややもすると雑味さえ覚える独特の筆致が岩城の絵画をむしろ魅力的のものにしている。風景画をあまり目にすることのなくなった今、ここに現代人の郷愁の在処を見ているのかも知れない。