木々が芽吹き、椿・梅などが寒中に咲き始め、生命の息吹に包まれるこの時期、「春のめざめ―横山大観・上村松園・小林古径・安田靫彦―」展を開催いたします。
本展覧会では、日本画の伝統的な画題である「花鳥」や「吉祥」を軸に、新春にふさわしい当館所蔵の約50点を展示します。
横山大観の≪天長地久≫や≪霊峰不二≫、安田靫彦≪富嶽≫に見られる雄大な富士の姿や、小林古径≪松竹梅≫、速水御舟≪春池温≫などの芳しい香りが漂う春の花。そして竹内栖鳳≪双鶴≫や≪鯛≫などの吉祥をテーマとした作品。また、本年の干支である「子(ねずみ)」を伸び伸びとした筆致で描いた渡辺省亭≪葡萄≫や奥村土牛≪子≫も子年にふさわしいモチーフです。高山辰雄の≪春を聴く≫では、寒々とした画面の中にもかすかな春の訪れを聴き取ることができます。桜の簪を挿す女性を描いた上村松園≪春のよそをひ≫からは、春の暖かさと柔らかな季節感が感じられるでしょう。それぞれの作家が作品に込めた、来るべき春への期待感を、どうぞお楽しみください。