現代の工芸は、長い歴史と伝統をふまえつつも、時代や社会の変化、さらには既存の造形芸術の影響を受けながら、工芸としての自立と拡張を目指して発展してきました。陶、ガラス、染織、漆、金属などの、いわゆる工芸の素材を出発点とした、その素材でしかつくり出すことができない造形世界を生み出す活動は、工芸の本質をあらためて問うとともに、さまざまな造形分野からも高い関心が寄せられています。
こうした工芸的なアプローチによる造形手法を「工芸的造形」と呼びますが、近年その活動はこれまでの工芸や美術の枠ではくくることのできない、その中間的な領域の作品を生み出し、新たな世界を構築しつつあります。それはまさに「工芸の力」であり、広い意味での現代美術を読み解くひとつのキーワードとして、これからの造形の世界でさらに注目されていくと思われます。
開館30周年を迎えた記念展Ⅱでは、こうした新しい造形を生み出す14名の作家の活動を通して21世紀の工芸世界を展望するとともに、その造形世界の魅力を紹介します。