日本の古代から中世にかけて、占いやまじないの技術のベースとなったのが陰陽道でした。古代中国の陰陽思想や五行思想に基づき、天体の運行や地上の異変を関連づけて説明する考え方を「陰陽道」とよび、朝廷には「陰陽寮」という専門の役所が設けられて、「陰陽師」という専門家がその技術を伝承していました。
災いを予知し、発生した異変を無難に処理する陰陽師たちは超人的な存在とみなされ、陰陽道の技術は民間社会に浸透し、日本文化の基層に深く広がっていきました。
ところで、鎌倉時代に成立した「称名寺聖教」を調べると、陰陽道の色彩を濃厚に含んだ密教修法が数多く見られます。この展示では、聖教という中世の仏教の書物を通じて、陰陽道と密教の混合した中世の信仰と観念の世界をご紹介します。