当館では昨年、パペットアニメーションで最も注目をあびる映像作家のひとり村田朋泰の個展を開催いたしましたが、こうした現在の日本のアニメーション誕生に少なからず影響をあたえてきたのがチェコのアニメーションです。
「チェコ・アニメ」という総称があるほどに、世界的に評価の高いチェコのアニメーション。
アニメ先進国チェコでは、絵本の制作にもアニメーションが影響を与えています。第二次世界大戦後、人形アニメーションのパイオニアとして世界的な名声を博した巨匠トゥルンカが、同時に数々の絵本の挿絵を手がけ国際アンデルセン賞を受賞したように、チェコ・アニメの作家たちの中には、絵本創作やイラストレーション、デザインなどを手がける場合も多く、そこには、アニメ作品と同様の詩的な世界が繰り広げられています。
そして、チェコの絵本の現代史をたどるとき、アニメーション映画やTVアニメーションの分野との交流が、絵本の世界をより豊かにしていることに気づかされます。
本展は、チェコとスロヴァキアの公立美術館や、旧国営アニメーション・スタジオなどの協力により、チェコを代表する作家28名の原画や制作過程の資料、絵本など約250点(展示替えあり)によって、20世紀前半から今日までのチェコ絵本史を、アニメーション制作と絡めながら辿ります。
チャペックやラダなど草創期の作家から、近年チェコで注目を集めている最新鋭の作家たちまで、幅広くご紹介しながら、作品の背景にある民話の世界や、ブックデザインの中に映し出されたチェコ・アヴァンギャルドの芸術運動などを通して、東欧文化の様々な潮流を見つめ直します。また、日本未公開のアニメーション映画もみのがせません。