野田哲也は、1940年熊本県に生まれ、日本の現代版画を代表する作家のひとりといわれています。
謄写版によるシルクスクリーンと水性木版画を組み合わせて表現した〈日記〉シリーズによって、独自の作品世界をつくりあげ、国際的な評価を受けている作家です。
〈日記〉シリーズは、自身の日常生活という極めて私的な主題を用いながら、一方でそれを一歩離れたところから見ているかのような客観性や普遍性が感じられる作品です。ある瞬間を閉じ込めたかのように見える画面は、同時に時間の流れも感じさせ、不思議な魅力を湛えています。
本展覧会では、1970年から1983年までの〈日記〉約20点によって、淡々と綴った日常の奥の豊かな多義性に迫ります。