「おしゃれ」や「装い」という言葉を聞いたとき、まず意識するのは身にまとっている衣服ではないでしょうか。
それは、衣服が全身の装飾において最も大きな位置を占めるからかもしれません。しかしあまり目立たない小さなところにも「おしゃれ」の意識は宿ります。アクセサリー、靴、バッグなどはそれ一つで全体の印象を変えるファッションの名脇役といえます。
江戸時代の装いもまた、多くの要素で構成されるものでした。一口にきものと言っても、着る人の身分や年齢によってその装いは異なりましたし、櫛や簪(かんざし)などの髪飾りには様々な素材・意匠のものが作り出されました。
また、ビロードの鼻緒や縁取りを履物に施された工夫にも、当時の装いに対する意識が感じられます。安易に引き比べることは出来ませんが、こうした様相は現在のファッションとさほどの違いがないように思われます。
きものはもちろん髪飾り・履物も加えて「頭からつま先まで」、江戸時代の女性の「装い」全体を見渡すのが本展覧会のテーマです。身につけた道具だけでなく「化粧」という要素も加えて展覧会を構成します。装いを演出したもろもろの道具を通して、当時の人々の美意識・心遣いを感じ取っていただければ幸いです。