「鷹のように鋭い」コレクターと評された実業家、萬野裕昭氏。氏がその半生をかけて蒐集された美術品は2000点におよび、国宝、重要文化財などの国指定文化財を多数含む、非常に質の高いコレクションとして知られています。かつては「謎のコレクション」とも評されましたが、昭和63年大阪の地に開館した萬野美術館において順次公開されるとともに、近年では写真家・篠山紀信氏とのコラボレーションによって一般の関心をも呼び起こしています。しかし、いまだ萬野美術館の外にはほとんどの作品が出ておらず、コレクションの本格的な紹介はなされていません。
本展覧会は、広い分野にわたる萬野氏の収集品の中から、コレクションの重要な柱である琳派の作品と茶道具の名品を選りすぐり、萬野コレクションの粋を紹介しようとする初めての試みです。琳派では、萬野氏が琳派の世界に魅せられるきっかけとなった「蔦の細道図屏風」(重文)をはじめとして、宗達、光悦から鈴木其一までの絵画、工芸作品を、茶道美術では、「玳玻天目散花文茶碗」(国宝)などの名碗、掛物から和物の器まで、茶の湯を愛した萬野氏の自由な境地が窺える茶道具の数々を展示いたします。さらに、「西行物語絵巻」(重文)など、コレクションの中から特に重要な作品も併せて特別に出品されます。本展覧会を通して、21世紀に受け継がれるべき秀逸なコレクションの世界をご堪能いただければ幸いです。