アルマンは、1928年フランスのニースに生まれた彫刻家です。1960年に、フランス戦後美術を代表する運動「ヌーボー・レアリスム」の結成に、イヴ・クライン、クリスト等と共に加わり、一躍世界の注目を浴びることになりました。
アルマンの作品は、現代社会で日々生産され、消費されてゆく日用品を使用しています。その特徴は、ヴァイオリンやチェロ等の楽器、電話器、靴、剣等を集積したり、切断したり、破壊したり、燃やしたりすることで、新に作品として再生させることです。言いかえれば、現代社会の生産と消費のメカニズムを想像力によって破壊し、ユーモアと、アイロニーに満ちた作品として復活させることであり、その思想の根底には若い頃から影響を受けた禅と仏教思想があります。
アルマンは現代社会のゆるやかな崩壊への進行に苛立ち、待ちきれずに自らが破壊行為に入っていきます。彼はこの破壊をコレール(怒り)と呼んで、そのの第一生贄になったのが一丁のヴァイオリンでした。叩き潰されたヴァイオリンは、あまりの唐突な死(破壊)を、自分でも予期しようのなかったとんでもない姿勢のまま完了し、そのまま木板に展示されてしまっています。
また、アルマンがブロンズでつくった最初の楽器もヴァイオリンでした。1977年から、多様な形のヴァイオリンを作り始めましたが、それ以来作品がいろいろに展開してきました。破壊され、スライスされたヴァイオリンの集積を木の箱に詰めた「トッカータとフーガ」をはじめ、数多くのヴァイオリンやチェロ等の楽器による作品を制作しています。
本展では、「破壊と集積による変奏の姿」をテーマに、石版、銅版による「ヴァイオリン論」シリーズを展示します。