パリ在住の洋画家、村山密の展覧会を開催し、初期から近年に至る画業を展望します。
1918年(大正7年)、茨城県潮来市に生まれた村山密は14歳で上京し、洋画を学びました。そこでパリから帰国したばかりの洋画家、岡鹿之助の作品に感銘を受け師事し、1954(昭和29)年、岡の勧めにより幼い頃から念願であったフランスへの渡航を果たします。
パリでは藤田藤嗣の知遇を得、その手引きによってフランスの文化に親しみ制作に励みました。この時の滞在は1年間でしたが、1959年に再渡仏してより現在に至るまで、約50年の長きにわたりパリに暮らし、風景画を中心に作品を描いています。
当地では、1962年にサロン・ドートンヌに初入選したのをはじめ、63年にはサロン・ナシオナル・デ・ボザールで《ノートル・ダム寺院》が外国作家賞、87年のモナコ王室主催国際現代絵画展で《ルーアンの聖堂》が宗教絵画特別賞を受賞したほか、79年にはサロン・ドートンヌ審査員に選ばれ、97年にはフランス政府よりレジヨン・ドヌール勲章(シュバリエ章)を授与されるなど、高く評価されています。
[見どころ]
水郷の地に生まれ育った村山は、水辺の風景を愛し、セーヌ河畔に居を構え、季節や時間によってうつろう情景を描いています。自然を温雅で簡潔なフォルムによって捉えた作品には清新さがあり、その詩情豊かな作風が親しまれてきました。また、《ノートル・ダム寺院》や《ルーアンの聖堂》など、各地の聖堂を描いた一連の画家の主要なテーマのひとつとなっています。本展では、画家の米寿を記念し、代表作をはじめ、未発表の近作を含めて約100点の作品により、村山芸術の足跡を振り返ります。