山寺の名で知られる宝珠山立石寺は、かつて松尾芭蕉が「閑さや岩にしみ入る蝉の声」の句を詠んだ東北の名勝の地。この山寺の豊かな自然と静寂に抱かれた後藤美術館には、山形県河北町出身の実業家・後藤季次郎氏の美術コレクションが収められています。
本展覧会では、この山寺・後藤美術館のコレクションのなかから、バルビゾン派を中心としたヨーロッパ絵画の優品86点をご紹介します。19世紀半ば、パリ南東に位置するバルビゾン村に集ったミレー、ルソー、トロワイヨンといった画家たちは自然と直接向き合い、数多くの風景画を描きました。彼らの表現は多様ですが、どの作品からも自然を愛する心が伝わってきます。コロー、クールベなど巨匠たちが描いた風景画も見逃せない逸品です。
また、バルビゾン派の前史を彩る18世紀の宮廷絵画やヨーロッパ諸国の巨匠たち、さらに19世紀のサロンで活躍した画家たちの名品もご覧いただきます。神話や聖書などにもとづいた歴史画や、日常の光景を描いた風俗画など、華やかで洗練された表現が一際目を引くことでしょう。そこにはバルビゾン派につながる自然への関心も垣間見えます。
今回中国地方では初公開となる山寺・後藤美術館のコレクションを通して、詩情溢れるヨーロッパ絵画の名品をぜひご堪能ください。