近年、日本の建築様式は「木造建築」に替わって、頑丈で巨大な建築物を造ることが可能なコンクリートなどの建築方法がひろく採用されています。
ところが江戸時代に至るまでの日本の建築様式では木造が圧倒的であり、世界最古の木造建築群「法隆寺」をはじめとして、多くの優れた木造建築を何世紀も経て現代に残しています。
これは木材をうまく利用するために、その性質を知り尽くした「大工職人」の知識と精密に切り組み合わせる技能、また彼らが使用する道具「大工道具」を製作した職人がいかに優れた精度と能力を道具に表現したかを私たちに示しています。
しかしこの木造建築を支えた大工道具には現代の建築様式では必要なくなったものが多くなり、大工道具は道具そのものを生み出す職人と道具を駆使する大工の技能とともに失われようとしています。
今回の企画展では、森林を豊富に有した日本の風土に合った木造建築文化を支えたさまざまな大工道具をはじめとして、外国の風土で生み出された大工道具もあわせて比較してご紹介します。伝統的な建築文化を支えた大工道具に込められた機能や意味を探り、日本の伝統的な建築文化の神髄に触れてみませんか。