本展では、韓国陶磁史上貴重な資料を数多く有する湖林博物館コレクションより、日本人に馴染みの深い朝鮮時代の陶磁器である白磁と粉青沙器を選りすぐり、109件120点の作品を日本初公開いたします。
湖林博物館は、1981年にその母体である「成保文化財団」が創設され、翌1982年に韓国ソウル市内に設立・開館しました。その所蔵品は1万点を超え、陶磁器だけを見ても4800点を数えます。そのほか絵画・典籍類から工芸品にいたるまで、そのコレクションは充実しており、近年では国外からも高い評価を得ています。湖林博物館は、まさに質・量ともに韓国トップレベルの博物館といえるでしょう。「民族文化の継承と発展」を設立目標に掲げ、開館して20年になる湖林博物館は、今後の更なる飛躍のためのプロジェクトを立ち上げ、現在ソウル市江南の中心地に分館を建設しています。3~4年後の開館を目指し、韓国の博物館から世界の博物館へ生まれ変わります。
本展覧会に出品される白磁・粉青沙器が生産されていた朝鮮時代は、前代の高麗王朝が仏教中心の政治体制であったのに対し、儒教思想が国家の統治理念であったため、政治・経済のみならず、その文化にも儒教思想の影響が色濃く反映されていました。儒教思想の影響は陶磁器にもおよび、儒教の道徳観念である「潔白」や「清浄」、「質素」「倹約」ということから、奢侈な装飾を迎え、清新さを具現化した陶磁器が焼成されます。その代表的なものが白磁や粉青沙器であり、白土・白化粧・白色釉薬を用いることで、飾らない造形美を生みだしてきました。