椅子・照明・ポスター各100点、計300点の作品で構成されるこの展覧会は、20世紀初頭から今日までのスペインにおけるデザインの歴史を振り返るものです。これまでスペインのデザインはあまり知られていませんでしたが、近年、スペイン国内でその意義が見直され、それにともなって日本でも紹介されることになりました。
多くの作例を時系列にそって紹介する今回の試みは、とくに1930年代の市民戦争時代に全盛期を迎えたポスターや、1980年代のデザインの隆盛を示す椅子や照明器具などをとおして、スペインの豊かな創造性を再認識する有意義な機会になると思われます。
また、ダリがデザインしたユニークな家具や、ミロやピカソのポスターといった、20世紀スペイン美術との豊かな結びつきを示す作品や、伝統と現代を融合させたバレンシアやバスク地方の地域性にあふれたデザインなどもとりあげられます。
キュレーターのジュリ・カペリャ氏はバルセロナの建築家。スペイン初のデザイン専門誌『デ・ディセーニョ』を創刊した理論家でもあります。彼はまた、「スペインのインダストリアル・デザイン」展(1998)のコミッショナーであり、今回の展示はその成果を反映しています。
それぞれの分野についての充実したテキストが盛りこまれる展覧会カタログは、スペイン・デザインの貴重な基礎資料になるほか、スペイン・デザイン大賞を受けたグラフィック・デザイナー、イシドロ・フェレール氏によるデザインも注目されます。