ID:80637
上田義彦 「FLOWERS」 Yoshihiko Ueda “FLOWERS”
Venue
小山登美夫ギャラリー六本木
TOMIO KOYAMA GALLERY ROPPONGI
Period
2025.8.23 [Sat.] - 9.6 [Sat.]
Exhibition Outline
上田義彦 「FLOWERS」 ウエダヨシヒコ 「FLOWERS」
Yoshihiko Ueda “FLOWERS”
この度小山登美夫ギャラリー六本木では、上田義彦展「FLOWERS」を開催いたします。
アート,広告というカテゴリーやジャンルにとらわれず、40年もの間第一線でシャッターを切り続けてきた上田義彦。 森、家族、河、建物、標本、紙、林檎の木、ポートレートなど、、世に存在する様々なモチーフを、真摯で鋭い一貫したまなざしで最高の瞬間として捉え、観るものを魅了してきました。
現在上田は、神奈川近代美術館葉山館にて今までの制作活動を約500点の作品で総覧する回顧展「いつも世界は遠く、」、GR SPACE TOKYOで「果実」・「チベットの蜜蜂」を開催し、また8月21日からOFS GALLERYにて「Beside Time 光に宿る記憶」、そして本展と、同時期に個展を意欲的に催しており、その写真、制作への情熱はとどまるところがありません。
本展では、「いつも世界は遠く、」展にあわせて現像し直し、自身改めてその魅力を再発見したという1997年の作品「FLOWERS」シリーズを展示いたします。
その他の作家の詳しい情報はこちらをご覧くださいhttps://tomiokoyamagallery.com/artists/yoshihikoueda/
【本展「FLOWERS」および出展作に関して
ー失われかけていた花の生命力と、太陽の光がもつ力】
「1995年夏頃から陽のよく当たる庭で、妻が部屋に飾った花瓶と、それに生けた切り花を外に持ち出し撮影するようになりました。引っ越しがきっかけです。海に近い家の庭は、晴れた日にはきらきらと眩しい光が降り注ぎます。僕はふだん、広告の撮影で忙しく、常にジェット機に乗っているような状態です。それが時々途切れ、まとまった時間がとれると、熱に浮かされたように一気に撮り進めました。
太陽の下で花を見る。当たり前のことのようですが、家の中で花瓶に生けられ飾られた花を外の太陽の下で見ると、失われかけていた生命力が光を浴びて蘇り、再び生きようとしはじめるのを感じました。ほとんどしおれ、本来の色を失った花でさえそのように感じられます。つまり僕は、花の生命力とともに太陽の光がもつ力を撮りたかったのだと思います。それは、死するものと生きようとする力を、あからさまな光の中で見届け、それを己に見せつける行為でした。僕が欲求する写真にとって好ましい光が、漆黒に佇む命を静かに照らす光から、しだいに『太陽のまぶしい光の下で命を見たい』という思いを抱かせる、そんな光に変化していったように思います。それを意識的に撮ったのが『FLOWERS』のはじまりでした。」
(上田義彦「太陽の下」『上田義彦 いつも世界は遠く、』展覧会図録、赤々舎、2025年)
作家自身このように記しているように、このシリーズは上田作品における光が変容する契機となりました。
この表現の変化は、上田が身を置く環境、心情、視点の変化と密接に通じており、上田は自分を取り巻く世界の機微を敏感に察知しながら対象への想いを一瞬のシャッターに込め、表現に反映しています。
「といっても、僕は妻が器に投げ入れてすぐの、鮮やかな花にはあまり興味がない。それが枯れて行き、生き残ったものだけが、ある日花茎を短く切りつめられてコップに活けられる。そして、キッチンの片隅に何気なく飾られる。すると、僕はようやくそれを美しいと思い、愛おしいと感じる。以前はこんな感じを持つことはなかった。すべて、結婚し、3人の娘ができてから感じるようになったことだ。」
(同上)
眩い太陽光と、萎れゆく花々。本来対比するそれらが相互が影響をおよぼし合い、死へ向かう花が光の力により不思議な強さとなにか意志のようなものまで持ち合わせたように感じさせます。それは上田が写し出すモチーフを、それがある環境を、そこに流れる時間を心から愛し慈しみ、その気持ちまでも映し出されているからこそ顕在化されるのであり、それが見る人の感情を揺さぶるのではないでしょうか。
美術評論家、写真研究者、同志社大学教授の清水穣氏は、上田作品について次のように評しています。
「上田義彦の『ありのまま』は、存在するものの最低限の本質ー「この」「これ」という単一性ーへの、還元や切り詰めという形式を取らない。それは、資本の流動であろうが広告の流行であろうが、最終的にはその支配下におかれている、世界の偶然性の別名なのである。それは、空模様をはじめとする自然条件や、いつ起きても起きなくても不思議ではない事件事故など、存在世界の偶然性を肯定することである。」
(清水穣「断念と憧憬ー上田義彦の旅」『上田義彦 いつも世界は遠く、』展覧会図録、赤々舎、2025年)
上田の視点を通して、鑑賞者は己を太陽光に投影するのか、枯れゆく花に投影するのか、遥かな時の流れの中の切り取られた一瞬に、様々な思いを馳せることができるでしょう。この貴重な機会にぜひお越しください。
- Closing Days
- 日月祝 休
- Opening Hours
- 11:00 ~ 19:00
- Exhibition Website
- https://tomiokoyamagallery.com/exhibitions/ueda-2025/
Events
オープニングレセプション:8月23日[土]17:00 - 19:00
Access Information
小山登美夫ギャラリー六本木 コヤマトミオギャラリーロッポンギ
TOMIO KOYAMA GALLERY ROPPONGI
- Address
-
〒106-0032
港区六本木6-5-24 complex665ビル2F - Website
- https://tomiokoyamagallery.com/
Created Date:2025.9.30