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Ceramic Site 2022 Ceramic Site 2022

大原千尋 かのうたかお 清水六兵衛 國方善博 小海滝久 小松純 重松あゆみ 杉山泰平 須浜智子 堤展子 西村充 長谷川直人 堀野利久 前田晶子 南野馨 テキスト:マルテル坂本牧子

Venue

ギャラリー白 ギャラリー白3 ギャラリー白kuro

Gallery HAKU

Period

2022年6月6日(月)ー6月18日(土)

Exhibition Outline

Ceramic Site 2022 Ceramic Site 2022

Ceramic Site 2022

陶芸であること、その強み
マルテル坂本牧子

Ceramic Siteは、来年20周年を迎える。2002年にギャラリー白が現在の場所に移転した翌年の2003年から、コロナ禍で中止となった2020年を除いて、毎年開催されてきた。その前身ともいえるのが、2001年に開催された15名の作家によるグループ展「陶芸展〈壁〉」であり、そこに名を連ねたメンバーのうち、大原千尋、小海滝久、小松純、重松あゆみ、杉山泰平、須浜智子、堤展子、西村充、堀野利久、前田晶子、南野馨の11名が、Ceramic Siteのメンバーに入っている。その後、2005年に國方善博、長谷川直人、2008年にかのうたかお、2013年に八代清水六兵衞が加わり、現在もCeramic Siteの中核をなす15名の作家が揃った。Ceramic Siteは、同じ作家たちが継続的に出品することで、現代の陶芸をめぐる動向をリアルタイムに、ある意味、定点観測で捉えてきた展覧会であるということができる。
1950~1970年代に生まれ、大学などで陶芸を学んでいる彼らは、ギャラリー白の創設者であった鳥山健氏(1922-2013)に見いだされた新進作家たちであった。鳥山氏は、1967年に開廊した今橋画廊で企画責任者を務めた後、1979年にギャラリー白を創設した。若手、ベテランを問わず、独自の視点で最先端のアートシーンを切り取り、工芸やデザインなどの領域で新しい表現を模索する作家たちにもいち早く注目するなど、貸画廊ながらも、関西のアートシーンを力強く牽引する重要な存在であった。Ceramic Siteに選ばれたのは、1980年代から1990年代にかけて、大きなうねりを見せた同時代の美術の動きとダイナミックに帯同しながら、土を造形素材の一つと捉え、従来の陶芸の枠には収まりきらないような、新しい表現を追求してきた作家たちである。彼らの多くは、かつて「クレイワーク」と呼ばれていた、陶芸が現代美術における一つの表現手段として著しい脚光を浴びていた時代の熱気を知っている。1970年代生まれのかのうは、この少し後、2000年代から本格的に作家活動を開始しており、クレイワークをいわば「歴史」として知る次の世代にあたるが、その余熱をギリギリ体験できているのではないかと思う。いずれにしても、鳥山氏がCeramic Siteを通じて、今という時代に照射しようとしていたのは、「土は自由にかたちを作ることが出来るために無限のかたちの領域を持ち、広い美術の世界をもっている」(註1)ということではなかったか。つまり、土の特異性を認めつつ、現代美術としての陶芸のポテンシャルを早々に見抜いていたのである。
Ceramic Siteが始まった2000年代初頭は、「美術か工芸か」という議論がさかんに行われ、陶芸を現代美術から工芸の範疇へと押し戻すような動きがあった。その中には、機能的なものも造形的なものも含まれ、あらゆる傾向の陶芸が含まれていた。現在、「クレイワーク」という言葉が、すっかり「現代陶芸」という言葉に取って代わられてしまったのは、恐らくそのためだ。土による斬新な立体造形も大規模なインスタレーションも、工芸における新しい一傾向というふうに位置づけられ、クレイワーク(現代美術)とは区別しようとしたのである。この動きと連動するかのように、陶芸専門の美術館、あるいは工芸を積極的に展示する美術館が次々と開館した。この頃から、現代美術をはじめとする他のジャンルの作品と共に陶芸が展示され、批評される機会は明らかに激減してしまった。
2003年、クレイワークを標榜する「大地の芸術-クレイワーク新世紀」という展覧会が、現代美術を専門とする国立国際美術館で開催されたことは、今、改めて考えるとじつに示唆的なことである。これは「既にある期間継続して土の仕事に取組み、クレイワークの方向性に対し示唆的な発表を行ってきた」(註2)9名の作家によるグループ展であり、「クレイワーク」をタイトルに冠した恐らく最後の展覧会となった。Ceramic Siteからは、重松あゆみ、杉山泰平、前田晶子の3名が選ばれていたが、彼らはいずれもギャラリー白で毎年、個展を行っており、本展に抜擢される要因となったことは想像に難くない。同館では、1994年に16名の作家によるグループ展「クレイワーク」と、それに連動して企画された若手作家のグループ展「近作展17 クレイワーク4人展」を実施しており、クレイワーク展には、重松あゆみ、堤展子、八代清水六兵衞、若手作家のグループ展には、小松純、南野馨が参加していた。2003年の「クレイワーク新世紀」は、この前回展を踏まえて企画されたものだった。
ここに連続で出品していたのが、重松あゆみである。重松は、1980年代初め、黒陶に彩色を加えたレリーフ状のパーツを集積し、壁面にインスタレーションした作品などで鮮烈な印象を残したが1990年代に入ってから作風を一新し、手捻りによる一つの立体の中にフォルム、空間、構造、色彩、質感といった様々な要素をぎゅっと凝縮させる造形へと転じていた。しかし、いずれのタイプの作品も、従来の陶芸のイメージを覆す斬新な造形として注目されてきたことは、特筆すべきことであろう。重松の作品は、大きな変化を遂げつつも、素材の特性を活かし、伝統的な工芸の手仕事を地道に積み重ね、その完成度に徹底的にこだわることで、きわめて洗練されたモダンな造形へと導いていく姿勢は一貫している。土が持つ原初的な力を高度に洗練されたかたちの中に込め、溢れ出る躍動感やエネルギーをその内側に漲らせていく。それは、工芸と美術のハイブリッドの可能性を美しく体現するものであった。
じつは、言葉として殆ど使われなくなっただけで、「クレイワーク的造形」が途絶えたわけではない。作家たちは、綿々と自身の制作を続けており、新しい世代の作家たちにもそれは脈々と受け継がれている。立体造形としての陶芸が、新しいフェーズに入っていった際、クレイワークに代わる新しい言葉が生まれてこなかった、ということだ。なぜ、クレイワークではだめだったのか。そして、新しい言葉は生まれなかったのか。
ここのところ、コロナ禍にも関わらず、工芸に対する問題提起を含む野心的な企画展が、同時多発的に開催されてきた。いずれも、ジャンルの越境やリミックス、ボーダーレス化という事象を今という時代の潮流と捉えた上で、比較的若い現代作家たちに焦点を当て、最新鋭かつ様々なタイプの作品を取り上げているのが特徴である。そこにはもはや、「美術か工芸か」という問いは見当たらない。
今、「陶芸であること」が、むしろ強みとなっていく。また、そんな時代に入ってきたのではないだろうか。
(Makiko Sakamoto-Martel 兵庫陶芸美術館学芸員)

註1 鳥山健「なぜこのかたちか?」『Ceramic Site 2007』ギャラリー白、2007年
註2 安来正博「クレイワークの座標-'80年代から現在までの座標」『大地の芸術-クレイワーク新世紀』国立国際美術館、2003年、p.110

Closing Days
日曜日休廊
Opening Hours
11:00a.m. ~ 7:00p.m.
土曜日5:00p.m.まで

Access Information

ギャラリー白 ギャラリー白3 ギャラリー白kuro ギャラリーハク

Gallery HAKU

Address
〒530-0047
大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル2F
Website
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Updated Date:2022.6.15
Created Date:2022.6.15