ID:81959
南野馨 展 MINAMINO Kaoru Exhibition
会場
星光画廊
SEIKO GALLERY
会期
2026年6月1日(月)ー6月13日(土)
展覧会概要
南野馨 展 ミナミノ カオル テン
MINAMINO Kaoru Exhibition
揺らぎを抱く南野馨の造形
南野馨が陶芸を始めたころは、上位世代による陶芸表現が、ダイナミックかつ挑戦的な造形を通じて注目を集めていた時期であった。工業デザインを志したものの、工芸専攻に進学した南野が、そういった時代の潮流に触れ、大きな空間を必要とする鑑賞性に特化した造形を志向したのは自然な流れであった。それとは別に、南野が陶芸というジャンルを選択したことは、すべての行程、構想を得てから作品の完成までを自身の手中に収めたいという、性格的な部分も大きかったようだ。
南野の造形に一貫して存在しているのは、機械工学的な技術によって生み出された人工物の有する美しさや、計算された構造性への憧憬である。しかし、それを土による造形に落とし込んでいくとき、乾燥や焼成といった技術上の制約による揺らぎが生まれる。つまり、設計段階で、完成形がほぼ約束される工業製品のような結果にはならないのである。南野は、その揺らぎを極力排除していく「制御」の問題と向き合いながらも、完全に無機的な方向を志向しているわけではない。事実、南野の造形と対峙するとき、接合面に生じたわずかな隙間や、若干の亀裂、作家の痕跡を感じさせる手跡、厚めにかけられた釉薬によるややぼってりとした質感といった、一種の有機性、工芸的な温度感が感じられる。ここに南野の造形が工芸的基盤に立脚している所以がある。
制作の経過において、南野は関心の変化に応じて造形を変遷させてきた。1990代の終盤から内外の空間性を意識し始め、さらに、球という形態に次第に惹かれ始めた。それを実現するための構造を模索し、2007年頃には近年の造形につながる球体を完成させた。どことなく工業的な印象から、次第にやきものの特性を顕在化させるような方向へと移行している。短大時代にろくろや鋳込みといった陶芸の全般的な技術を-通り経験し、大学でも教鞭を執っている南野は、常に陶芸の基本的な部分に立ち返る機会を得、古くから人々の用に供されてきた、やきものの持つ内と外の空間や構造といったものの原理を無意識裡に享受し、現在、ここに帰結しているのではないかと推測する。そして、こうした陶芸の特性と、つかず離れずの関係を保ちながら実験を続けている。
南野の造形は、社会への問題提起や自身の内面への問いかけというよりも、個人的な嗜好と強く結びついている。おそらく、南野にとって作ることは、作品を通じて自身が美しいと感じたものへの共感を得る行為である。これまでは、モチーフと造形の関係性を明示してこなかったが、この度の個展では、自身が美しいと思った人工物へのイメージを率直に抱き、制作を行ったようである。それが何であるかは、会場で確かめてほしい。「工芸的機械美」、それが、南野が目指す造形である。
村上ふみ(兵庫陶芸美術館学芸員)
- 休催日
- 日曜日休廊
- 開催時間
- 12:00 ~ 19:00
- 土曜日12:00 - 17:00
会場情報
登録日:2026年5月8日