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今村有策退任記念展

Yusaku Imamura Retirement Commemorative Exhibition

ニューオルタナティブズ New Alternatives

問いの研究所

Laboratory of Questions

なぜ問いなのか?問いの対話を続ける

会場

東京藝術大学大学美術館 陳列館

THE UNIVERSITY ART MUSEUM, TOKYO UNIVERSITY OF THE ARTS

会期

2025年9月27日(土) - 10月7日(火)

展覧会概要

今村有策退任記念展 ニューオルタナティブズ ニューオルタナティブズ 問いの研究所

Yusaku Imamura Retirement Commemorative Exhibition New Alternatives Laboratory of Questions

世の中が答えを求めすぎるあまり、問うことの重要性が忘れ去られていると感じています。建築設計、アートセンターでの活動、大学での教育研究などの実践の中で、問いは常に私の核にありました。大学で教育研究に携わるようになって驚いたことは、教育も答えを求めているということです。もちろんマーケットも、そして戦争すら答えとして提出されていると感じるのです。思想家として洋の東西を超えて根底につながる人間の思想を模索した井筒俊彦はこう語ります。

対話という言葉で私は禅文化の歴史的発展のうちに現われてきた極めて特異な対話形式としての「問答」のことを考えていた。Beyond Dialogueとは、言うまでもなく「対話の彼方」とか「対話を越えて」とかいう意味であるが、主眼とするところは、禅の立場からすると、単に対話を超脱して人間言語がその作用性を完全に喪失し、言語がまったく働かなくなるようなところに行ってしまい、そしてそれきりになってしまうということではなくて、かえってそのような無言語の場から言葉が出てきて、普通の意味での対話が成立し得ないようなところで、異次元の対話が成立する、そういう特殊な対話の精神的意義と重要性を指摘し問題にしてみたいというところにあった。だから私の積りでは、Beyond Dialogueとは「対話の彼方」であると同時に、それよりもむしろ Beyond-Dialogue つまり「(対話の)彼方での対話」、常識的に考えられる言動活動の場面の彼方で、あるいは彼方から生起してくる対話を意味する。そのようなものとして禅問答の構造を論じてみたいと思ったのである。(井筒俊彦「対話と非対話一禅問答についての考察一)

ハンナ・アーレントには多くの示唆をもらいましたが、彼女の文章の中にも問いの大切さが語られているところがありました。

思考によって立ち現れる、理性の本性として問わずにはいられない問い一すなわち意味の問いーはどれも、常識やそれを洗練させた我々が科学と呼ぶものでは答えることができないものだ。(ハンナ・アーレント「精神の生活」)

私が問いたいのは答えを求める問いではありません。個人が切実に問う、問いです。すでに意味が固定化し、情報をやり取りする水平的な対話ではなく、井筒俊彦が禅問答を通して提示したBeyond-Dialogue 「向こう側の対話」ともいえる対話ができればと思います。少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、生きるとは答えを見つけることではないと考えます。生きることそのものが大切でありながら、答えや成功を求めていないでしょうか?もしかして世界は答えを求めることで間違ってきたのではないでしょうか?
私はただ生きること、ともにいること、一緒にいることの奇跡が何よりも素晴らしいと感じています。赤子は何もできません。しかし、ただ愛おしいのです。いのちとはそういうものなのではないでしょうか?それは私の愛犬が教えてくれました。答えなき世界。そのようなことを考えるようになってきました。


INVITATION
このたび、2025年9月27日から10月7日まで「ニューオルタナティブズー問いの研究所」を東京藝術大学陳列館にオープンします。
現代と未来において私たちが直面するべき問いを考察し、対話を交わす場としたいと考えています。退任にあたり、これまで問い続けてきた問いと新たな問いを共有し、ラボラトリーの船出としたいと思います。
今村有策は、日本で初めて公共芸術文化機関としてのオルタナティブ・スペース「トーキョーワンダーサイト」を提案し、その設立と運営を担いました。この取り組みは、芸術文化行政への問いであるとともに、オルタナティブな実践でした。今村の解釈によれば、オルタナティブは代替えを意味するのではなく、本来あるべきものへの希求から生まれるものだからです。活動はやがて国内にとどまらず、世界各地のオルタナティブな活動との国際的ネットワークへと発展していきます。同時にこのオルタナティブな場での実践が今村が参与として主導した東京都の文化政策のバックボーンとなり、アーツカウンシル東京の創設に代表される芸術文化の創造基盤構築に深く寄与してきました。
東京藝術大学着任後には、教授、副学長として問いの重視、文化間対話、国際連携を学びの場に生み出しながら、いまの世界でのアートの役割、社会の関係を問い続けてきました。
この度、これまで投げかけてきた「問い」を皆さんと共に改めて考える機会としたいと思います。その問いは常に「オルタナティブ」という考え方やアプローチと結びついており、ここではオルタナティブの現在、そして未来における役割と可能性を探っていきます。会場となる東京藝大陳列館は「ラボラトリー」として機能します。2階では、これまで国内外で共に活動してきたアーティスト、キュレーター、芸術文化の専門家、研究者、実践者、学生たちと共に、今村の問いを起点として、それぞれの問いを共有し、対話する場を設けます。1階では、今村のこれまでの活動を紹介し、連日のワークショップ、ゲストとのトークなども交えながら問いが生まれた背景や実践を振り返ります。
今村有策+問いの研究所チーム

・参加者 Participants
アハメッド&ラシッド・ビン・シャビブ Ahmed & Rashid bin Shabib
アリソン・グリーン Alison Green
アンソニー・ガードナー Anthony Gardner
アピチャッポン・ウィーラセタクン Apichatpong Weerasethakul
アラヤー・ラートチャムルンスック Araya Rasdjarmrearnsook
ボスコ・ソディ Bosco Sodi
キャシー・ミリケン Cathy Milliken
永岡大輔 Daisuke Nagaoka
坂本大三郎 Daizaburo Sakamoto
ダニー・ユン Danny Yung
クリッティヤー・カーウィーウォン Gridthiya Gaweewong
鈴木ヒラク Hiraku Suzuki
遠藤一郎 Ichiro Endo
イルワン・アーメット&ティタ・サリナ Irwan Ahmett & Tita Salina
ジャスティン・サイモンズ Justine Simons
カミン・ラーチャイプラサート Kamin Lertchaiprasert
日比野克彦 Katsuhiko Hibino
二藤健人 Kento Nito
キャズ・T・ヨネダ Kaz T. Yoneda
クゥワイ・サムナン Khvay Samnang
mamoru mamoru
マルワ・アルサ二オス Marwa Arsanios
岩井優 Masaru Iwai
河合政之 Masayuki Kawai
ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ Moon Kyungwon & Jeon Joonho
下道基行 Motoyuki Shitamichi
オル太 OLTA
オン・ケンセン Ong Keng Sen
白雙全 Pak Sheung Chuen
ポール・ヘイウッド Paul Haywood
ラクス・メディア・コレクティヴ Raqs Media Collective
ルアンルパ ruangrupa
安部良 Ryo Abe
木戸龍介 Ryusuke Kido
大巻伸嗣 Shinji Ohmaki
ソム・スパパリンヤ Som Supaparinya
Takram Takram
桑久保徹 Toru Kuwakubo
栗林隆 Takashi Kuribayashi
トラン・ミン・ドゥック・フライングベイ Trần Minh Đức Flyingbay
小沢剛 Tsuyoshi Ozawa
トゥアン・マミ Tuan Mami
ウィット・ピムカンチャナポン Wit Pimkanchanapong
川久保ジョイ Yoi Kawakubo
毛利嘉孝 Yosuke Amemiya
雨宮庸介 Yoshitaka Mori
チャン・ヨンヘ重工業 Young-Hae Chang Heavy Industries
田村友一郎 Yuichiro Tamura
渡辺裕紀子 Yukiko Watanabe
毛利悠子 Yuko Mohri

・今村研アーティスト Imamura Laboratory Artists
木戸龍介 Ryusuke Kido
石井トモ Tommo Ishii
池上夢与 Yumeto Ikegami
内田拓海 Takumi Uchida
ビラバイタヤ・ユイ Yui Viravaidhya
葉楓 Feng YE
サリーナー・サッタポン Sareena Sattapon
伊藤悠希 Yuki Ito
シクステ・カキンダ Sixte Kakinda
椎名素代 Motoyo Shiina
カタリーナ Catalina Vallejos
キム・ミンキュ Minkyu Kim
ソ・ミョンソプ myungsub Suh
井上修志 Shuji Inoue
加藤康司 Koji Kato
プープラサート デュアンチャイ プーチャナ Duenchayphoochana Phooprasert
ヨハナ・リード JHNSI
邢越豪 Hal Xing
田原唯之 Tadayuki Tahara
朴 茶仁 Da In Park
張声揚 Zhang Shengyang

主催者
東京藝術大学美術学部
協賛・協力等
共催:東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートフプラクティス専攻、問いの研究所
助成:公益財団法人 野村財団、公益財団法人 鹿島美術財団、東京藝術大学美術学部 杜の会
キュレーション:家村佳代子、今村宙幹
協力:木戸龍介、加藤康司、赤坂有芽、東京藝大 GAP 専攻、GAP 修了生、今村研究室修了生・在籍生、藝大×東大ベンチプロジェクト、東京藝術大学グローバルサポートセンター、はじめ塾
広報デザイン:寺井恵司
会場設営:スーパー・ファクトリー
展覧会ホームページ
https://museum.geidai.ac.jp/exhibit/2025/09/yusakuimamura.html
展覧会問合わせ先
美術研究科グローバルアートプラクティス専攻
ハローダイヤル:050-5541-8600

イベント情報

オープニングトークイベント
9月28日(日)2:00-5:00pm
東京藝術大学大学美術館陳列館2階
なぜいまオルタナティブなのか?
オルタナティブの向こうには何があるのか?
・レザ・アフィシナ(ルアンルパ)
・アンソニー・ガードナー(オックスフォード大学現代美術史教授、美術学部大学院学部長、前ラスキン・スクール・オブ・アート所長)
・今村有策
*日英逐次通訳

オープニングレセプション
9月28日(日)5:30-7:30pm|藝大食樂部(元大浦食堂)

クロージングイベント
10月7日(火)4:00-6:30pm
東京藝術大学大学美術館陳列館2階
『今の社会にアートはどんな問いを投げえるのか」
毛利嘉考(東京藝術大学教授)、今村有策ほか

会期中のイベント
連日、今村とゲストによるワークショップを開催します。
詳細に関してはInstagramで随時更新します

会場情報

東京藝術大学大学美術館 トウキョウゲイジュツダイガクダイガクビジュツカン

THE UNIVERSITY ART MUSEUM, TOKYO UNIVERSITY OF THE ARTS

会場住所
〒110-8714
台東区上野公園12-8
ホームページ
https://museum.geidai.ac.jp
更新日:2025年11月13日
登録日:2025年11月4日