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中道 由貴子 個展 NAKAMICHI Yukiko Exhibition
会場
ギャラリーモーニング
gallery morning
会期
2024年9月27日(金)-10月6日(日)
展覧会概要
中道 由貴子 個展 ナカミチ ユキコ コテン
NAKAMICHI Yukiko Exhibition
身近な植物を見下ろしたり、見上げたり、描き重ね、描き重ね、動きと時間と記憶を半透明な奥行きの中に描こうとしています。
一時期、職場と家の往復だけの生活でしたが、昨年から少しずつ遠出をするようになりました。しかし旅先で記憶する画角は風景とわかるものがなく、そうか、どこに行こうと必要なものは私とそこにある植物との関係なのだと、旅に出たことで改めて自分の絵に必要なことを再確認したのです。 中道 由貴子
ゆらぎ続ける絵
中道由貴子は、ここ10年以上、一貫して植物など自然のモチーフを描き続けてきた。制作にあたっては、自ら撮った写真もしばしば参照するそうだから、それらは彼女が日々暮らす中で出会い、実際に目にした眺めだろう。
わたしたちの目の前で、自然の眺めは刻々と変化し、一瞬たりともとどまることはない。その移ろいをとらえようと、かつて印象派の画家たちは、筆触を立てて色を並置するという方法を編み出した。画面を見るたび、目と脳が像を立ち上げ、再生する。けれども、この場合に移ろい変化しているのは、対象と目の間にある光や大気のおりなす、まさに印象=感覚(サンサシオン)であって、対象そのものではない。
たとえ道端の何気ない植え込みであっても、やぶをなす草木のひとつひとつは日々それぞれに成長し、姿を変え続けている。それをも絵にできないかという困難な課題を前に、中道のまなざしは、より対象に肉薄する。草木の一本一本、一葉一葉を、まるで内側の組織を透かし見るかのような半透明の皮膜として、等しく丁寧に描き出す。画面に絵具を浸透させ、あるいは拭ってを繰り返すことで、どの皮膜も絵肌と限りなく一体化しつつ、薄皮一枚分のたしかな存在となる。成長の予感をはらむ有機的な輪郭は、透けてはいるけれども、くっきりとあざやかで、花や葉が互いによく似た姿をずらしながら、何層にも重なりあう。まなざしをそそぐたびに、花弁が、枝葉が、群れるゆらめきの中からふっと浮かびあがり、あるいは影に沈み、画面のそこここで可変のあわいを生じては、また一枚の絵肌に戻ってゆく。
それぞれの作品で画面の縦横の比率は違っても、枠張りの矩形というかたちは踏襲されていて、つまり見るための装置たる絵画のフォーマットが、まなざしのゆらぎを担保する。と同時に中道は、この枠組みさえ絶対には決めこまない。絵具を浸みこませるために描く際は平らにしていた絵を、いったんは作者が上下を決めて壁に展示するのだが、時に上下や縦横を入れかえることもあり、何なら第三者の手に渡ったあと変えてもらっても構わない、という。ふと緑を見下ろし、あるいは見上げる時、見るわたしが少し足を踏み出せば、画面の上下など、いとも簡単にゆらぎ、入れかわる。ひとつひとつが等しく生きて存在し、かつ互いに関わりあいながら、変化を留めることのない緑の群れ。そこにまなざしをそそぐ者もまた同じく自然に一部として生き、変わり続けている。地に根ざした生をとらえようとする中道の絵は、そのモチーフと同様、しなやかにゆらぎながら着実に、独自の歩みを続けている。
江上ゆか(兵庫県立美術館 学芸員)
- 休催日
- (月曜日休廊)
- 開催時間
- 12時 ~ 18時
- 展覧会ホームページ
- https://gallerymorningkyoto.blogspot.com/2024/07/nakamichi-yukiko-2024-92029.html
会場情報
ギャラリーモーニング ギャラリーモーニング
gallery morning
- 会場住所
-
〒605-0034
京都市東山区中之町207 三条通り岡崎広道 南西角 - ホームページ
- https://gallerymorningkyoto.com
登録日:2024年11月5日