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観音さまの思い込み

~倉吉芸術の奥行きを探る~ 明倫AIR2020成果発表会
AIR招聘アーティスト 久保田沙耶 作品展

会場

倉吉博物館

会期

2020 11/27FRI▶▶▶12/20SUN

展覧会概要

観音さまの思い込み カンノンサマノオモイコミ ~倉吉芸術の奥行きを探る~ 明倫AIR2020成果発表会
AIR招聘アーティスト 久保田沙耶 作品展

思い込みの果て
私たちはみんな思い込みのなかで生きている。「思い込み」を辞書で調べると「いちずに心をうちこむこと。固く信じこんだり、決心したり、愛したりすること。」(出典:『精選版 日本国語大辞典』小学館)とある。ここで、倉吉に滞在してからはじまった思い込みについての話をしたい。この4年間ずっと私が白衣観音のために制作を続けてきた理由についてだ。
2016年、アーティストの中村絵美との一年目の滞在制作が終わり倉吉を離れる日、わたしたちは別れの挨拶をしに小鴨川に行った。川の周りにはたくさんの大木がある。樹齢約400年の大銀杏はずっとこの土地を見守ってきた。そばの祠では、かつて水害で流されたお地蔵様たちが河原石でできた丸い頭をかかげて所狭しと祀られている。川向こうから大銀杏を「お~い」と呼ぶ大きなスダジイが山の中にひょっこり見える。現在は川向こうにあるが、時代とともに変わっていった川の形とともにかつては氾濫原の中に位置したこともあり、水害と人の暮らしに密接に関係してきた丸山だ。入ってみると年老いたスダジイに包まれるようにして若い藪椿が幹に寄生している。まるで若い妻の椿を守っているようなスダジイのそばにひっそりと佇んでいたのが白衣観音だ。水害の際、門原源六が奉納した観音様である。そしてあの大銀杏のそばのお地蔵様も彼が奉納したと聞く。石造のお地蔵様でさえ頭がとれ、角が取れ、全体がとろけるような丸みを帯びていた。水害で一緒に流れ着いたものたちや、当時源六のみた景色は果たしてどんな様子だっただろうか。
大銀杏とスダジイが風を受けてさやさやと話をしている。そっちはどうだ、こっちはこうだよ、歳をとったね、川の形が変わったね。源六はそんな二人の親友の声に気がついて、観音様とお地蔵様をここに奉納せざるを得なかったのだ。わたしはそう思い込んだ。わたしたちふたりはこの畏怖のような感覚に対して子どものように泣くことしかできず、言葉にしたり表現したりというようなある種の編集めいたことをするのが恐ろしくなって、この体験についてずっと黙ってきた。その後4年間一人で滞在制作を続けさせていただき、やっと今年はじめてこのことを記すことにした。この展覧会は、この土地に生きたすべての物事に私たちがギフトを捧げるきっかけになることを願う。
2020年 久保田沙耶

協賛・協力等
【展覧会後援・協力】公益財団法人エネルギア文化・スポーツ財団/鳥取県市町村連携型地域活性化拠点事業/文化庁
休催日
月曜定期休館(12/5・6臨時休館)
開催時間
9:00 ~ 17:00
観覧料
無料

イベント情報

トークイベント開催<ゲストスピーカー 久保田沙耶 渡邊太(社会学者)など>
展覧会を記念し、久保田沙耶さんをお迎えしてトークイベントを開催します。
どのように作品を作られていったのか、倉吉での活動や地域の魅力について作家自ら語っていただく貴重な機会になっております。
■日時:2020年12月12日(土)14:00~16:00(開場は13:30~)
■会場:倉吉市立中央児童館(フィギュアミュージアム裏)
■参加費:無料
■申し込み:080-5419-8731(担当:中山)までお電話いただき
お名前・お電話番号・人数をお知らせください。
*フィジカルディスタンスを充分に確保しながら開催となります。
*定員になりしだい申込終了となります。
*ご参加の方にはマスクの着用をお願いいたします。

会場情報

倉吉博物館 クラヨシハクブツカン

会場住所
〒682-0824
倉吉市仲ノ町3445-8
ホームページ
https://www1.city.kurayoshi.lg.jp/hakubutsu/
更新日:2024年10月22日
登録日:2020年12月16日